先生、お久しぶりです! 言っても昨日会いましたけどね! 今日もほんと暑くてやばかったですね。昨日もですけど、今日もセミがすーごくて、うちが田舎だからこうですけど、都会の人ってセミの声聞いたことあるのかな、ってちょっと謎に思いました。  先生はいろんなところに行かれるからその分いろんな街を感じて来たんだと思います。私はまだここと、昔住んでたところだけだし、昔住んでたところは三歳で引っ越したんで何にも覚えてないんです。  先生に教えてもらえるのはいつもぼんやりしてて、思い出話ばかりで、街の歴史とか風景とかは二の次なんですよね。そりゃあ、ご自身の感じて来たことが思い出されるのは当然ですし、それについて私が怒るなんてあり得ませんけど、もっといろんなことを知り合いなって思います。  美味しい甘酒を出す店、スイーツの違った食べ方、襖の模様や、所作。先生の話は真剣に聞けば聞くほど深みにハマってしまいそうです。  この手紙は夜に書いています。私もお昼は忙しいんですよ。友達と遊びに出かけたり、メールしたり、かわいい写真撮ったり。ほとんど誰かと一緒にやるので、集中できるのは夜しかないんです。  今夜は満月だったそうです。私の部屋の窓からそれが見えて、ぽっかり浮かぶ、の意味が少しわかります。建物は低くて夜は深い。都会に憧れてはいるけれど、私は自然の美しさとその愛し方がわかるタイプの若者なので、離れ難い魅力があります。  先生は私の何倍もの世界と時代を見てこられて、羨ましいです。私も早く、もっと多くのことを知って、誰かに伝えたり自分の中で噛み締めたりしてみたい。なにをどれぐらいしたらそうなれますか?  明日もおうちに行きますね。友達に先生の本を紹介したら喜んでくれたので、いつか一緒にお邪魔したいです。  るいな